先日、ビルギットコーラーさんと話をしている中で、「篳篥・朱」を使うとレゾナンスが変わると言う話があったので、話を聞き進めると、彼女うが言うレゾナンスには、二つあって「自然との共鳴(レゾナンス)」と「精神的な共鳴」があると言っています。

「(楽器は)自然との共鳴」と言ったのは、楽器が単なる道具ではなく、自然と調和しながら音を生み出すもので、音の響き、そして演奏者の感覚といったさまざまな要素があるようです。
楽器の素材は自然と深い関わりがあります。多くの楽器は、木、金属、羊腸(弦)、馬の毛(弓)など、自然由来の素材から作られています。
例えば、ヴァイオリンやギターに使われる木材は、その木が育った環境によって響きが異なります。
木の年輪の密度や乾燥の仕方が、音の響き方に影響を与えるのです。
そのため篳篥をオーディオ機器やケールにつける場合、くくり付ける素材によって音が変わります。

音の響き自体も自然の法則に従っています。
音は振動として空気を伝わり、私たちの耳に届きます。
これは共鳴や倍音といった物理現象によるもので、楽器はこうした自然の法則を利用して美しい音を生み出します。
楽器はただ音を発するのではなく、自然の力と共鳴しながら響きを作り出しているので、 (篳篥・朱が)大きな助けになると言っています。
さらに、演奏者と楽器の間にも自然との一体感が存在するので、演奏者が楽器を奏でるとき、呼吸や身体の動きが楽器の響きと連動し、まるで楽器が演奏者の一部のようになります。
自然のリズムや流れと調和することで、音楽に生命が吹き込まれ、単なる音ではなく、感情や情景を表現する力を持つようになるようです。

例えば、名器ストラディバリウスのヴァイオリンは、アルプス地方のスプルースなど特殊な木材を使っており、100年以上の時を経て響きが深まると言われています。
ピアノの響板も木製で、湿度や温度に影響を受けながら、自然な振動を生み出します。このように、楽器は「自然が持つ響きの法則」と共鳴しながら音楽を作り出しているのです。
この考え方を知ると、楽器は単なる道具ではなく、自然の一部として息づいていることがわかります。


彼女がもう一つ「楽器と自然の共振には、物理的なものだけでなく精神的な共振もある」と話すのは、演奏者の精神や感情が楽器を通して自然と共鳴する存在であるという深い意味を持つからだと言っています。
「精神的な共振」とは、演奏者が楽器を通じて自然や宇宙の流れと調和し、一体感を感じることであり、優れた演奏家は楽器を単なる道具としてではなく自分の「分身」として、呼吸や感情がそのまま楽器の音に反映されることで楽器が「生きている」ように感じるそうです。
バイオリンやピアノの音が鳥のさえずりや風の音と共鳴するとき、音楽が自然の一部になったように感じたり、人間の心臓の鼓動や呼吸のリズムと音楽のテンポがシンクロすると、誰もが深い感動を覚えます。さらに、一部の演奏家は「音楽とは宇宙の調和を表現するもの」と考えており、バッハの音楽が「数学的な美しさ」と「神秘的な感動」の両方を持つように、音楽が人間の精神と宇宙の法則をつなぐと感じることもあります。
実際に、ピアニストのグレン・グールドはバッハを弾く際に「宇宙とつながる感覚」を持っていたと言われ、チェリストのヨーヨー・マは「演奏するとき、楽器と自分、そして聴衆が一体となる瞬間がある」と語り、尺八や琴などの伝統楽器においては「自然の音を奏でることで、心が整い、宇宙と共鳴する」と考えられることもあります。
このように、楽器は単に音を出すための道具ではなく、演奏者の精神や感情、さらには自然との一体感を生むものであるからこそ、クラシック演奏家は「楽器は自然とのレゾナンスであり、精神的な共振もある」と考えるのでしょうか。

篳篥が、オーディオだけでなく演奏家とも繋がったのは、篳篥自身の力かも知れません。