10月、六本木の音楽家が夜な夜な集まるクラブ・エレクトリック神社で、ベーシストのアヴィシャイ・
コーエンさんを彼のマネジャーさんと待っていると、ノンジャンルの女性ボーカリストMiss Rさん(写真)と隣り合わせた。隣にいるだけで彼女のエネルギーが伝わってくる何か熱くなるものを感じた。
話しかけてみると、自宅でボイストレーニングを終えて一人で立ち寄ったそうでテンションが高い。
こちらの身分を明かし、篳篥を色々な演奏家に紹介していることを話すととても興味がると言う。
これまで篳篥は楽器に付けることで、楽器と演奏家が深く繋がると思っていてビルギット・コーエンさんや色々な演奏家に使ってもらっていることを話した。
ふと声にも使えるのかな、と頭をよぎったので、彼女に「使ってみる?」と聞くと、「使ってみたい!」と言う。
「喉あたりに付ければ良いのかな」と思いついたので、お店の方にバンドエイドを一枚もらって、
付けてもらった。
驚いたのは、付けた後の彼女の話し声が、すごく抜けが良く通る声になっていた。
いったい篳篥がどう作用したのだろう。彼女にとって声が楽器だとすると、彼女の意思と彼女の声帯がが繋がったのだろうか。彼女もその変化に気が付いて「(ここで)歌ってみようか」と言い出して、
彼女の自作の曲、さっきまで自宅で歌っていた曲を歌出だした。僕は、付ける前の声を聞いていなかったから「ハスキーでいい声だなあ、ノラ・ジョーンズにテイストが近いな」と思った。
側にいたタキオノ氏も彼女の声に聴き入っていた。
歌い終わって「これ(篳篥)使ってみたい!」と言うので、「ブログに載せてもよいなら提供するよ」と言ったら、実は12月にメジャーからCDデビューすることや、歌はジャンルにこだわらないなど、ひとしきり話した後、篳篥を1本持ち帰った。
数日後、彼女から自宅で録音したワンコーラスの音声データが届いた。
それも丁寧なことに篳篥を付ける前と付けた後の音声データだ。
その歌声は明かに違う。
さらに数日後、もう一曲、音声データが送られてきた。
これも篳篥を付ける前と付けた後の音声データで、篳篥の使い方がわかってきたのか、さらに素晴らしい歌声だ。その音声データの後に「このまま(歌うことに)篳篥に頼っていて良いのか怖い」とコメントがあった。彼女はCDデビューのための録音を間近に控えている。演奏家にとって判断を迫られている。
ビルギット・コーラーさんの様に、その効果の可能性をどんどん追求する演奏家もいる一方、Miss Rさんのようにナーバスになる人もいる。
この音声データをこの場にアップしたいけれど、彼女に確認したところ、レコード会社との契約に抵触するそうなのでお聴きかせすることは出来ません。実名もアップしてはいけないそうですが、写真のアップはOKとのこと。ブログにアップは出来ませんが音声データは保存しているので、何かの機会にお聴かせしたいと思います。